コロナ禍の影響もあって、2年越しの懸案となった「中高年女性のデジタル行政への要望書」を3月8日、3月16日、関係官庁に届けることが出来ました。
一昨年秋、高齢者のみに調査をお願いし、あっという間に一千票を越す回答が寄せられ、注目を浴びた「高齢者ICT実態調査」は、即、集計と分析にかかり、同時にオンライン併用の勉強会を3回行い、昨年の全国大会松山大会では、高齢者とデジタル問題の分科会を設けて、「要望書」提出を大会で決議いたしました。
提出先は、デジタル庁・総務省・厚労省、一足遅れて内閣府男女共同参画局でした。高齢者がデジタル行政から一人も取り残されない政策を強く要望し、高齢者も学んでいくことを約束しました。要望書全文(308KB)を掲載しますのでご覧ください。
本会の「高齢者の服薬に関する実態調査」は、討ち入りシンポで単純集計のみの中間報告を行いましたが、その後クロス集計を加えたデータを、12月22日に開催された第5回「高齢者医薬品適正使用検討会」の席上、樋口理事長、石田理事より発表し、大きな感嘆と賛辞が寄せられました。
高齢当事者の服薬に関する5000票を超すような大規模調査は、今までになかったことと、見えた実態・結果は真摯に受け止めていただけました。
引き続き厚生記者会にて記者会見を行い、マスコミ関係にも発表させていただきました。
当日の資料データをご覧になりたい方は下記へ
高齢者の服薬に関する現状と意識
※無断転載は禁じます。
”引用は©高齢社会をよくする女性の会と明記ください。”
写真はこちらをご覧ください
昨年3月1日認知症鉄道事故賠償裁判に関する最高裁判決を受けて、法律の専門家、研究家、活動グループと研究会を立ち上げ、研究討議を重ねてきました。
1月30日、認知症になっても安心して生きられる、行動を束縛されない社会づくりへの要望書をまとめて、塩崎恭久厚生労働大臣に面会・提出してまいりました。
要望書内容こちらをご覧ください
塩崎大臣要望書目次
提出用 要望項目 塩崎恭久大臣
提出用要望書塩崎恭久大臣
写真はこちらをご覧ください
回答者数 4,744人 調査時期は、昨年12月末から2月25日でしたが、全国10歳代〜90歳代の女性3,485人、男性1,259人から ご回答をお寄せいただきました。ありがとうございました。心からお礼申し上げます。
「会員の皆さまへ
この度は年末年始のご多用中、深刻な問題に関するアンケート調査に
ご協力いただき、まことにありがとうございました。
おかげさまで多数のお答えをいただき、以下のようにまとめました。
さすが本会の底力。ありがとうございました。
2013年3月10日 理事長 樋口恵子」
9月27日に個人情報保護法の運用に関する要望書を提出しました。
提出先は松原仁内閣府特命担当大臣、小宮山洋子厚生労働大臣、
阿南 久消費者庁長官、厚生労働省の原勝則老健局長、原徳壽医政局長です。
個人情報保護法の運用における過剰反応が、地域の支えあいに支障をきたしている現実にぶつかった京都のグループ会員が、
問題として取り上げ、京都でも本会でも勉強会を重ね、今回の要望書提出に至りました。
提出した要望書はこちらをご覧ください
介護保険は栄養失調→日本の老いを支える新たな覚悟が必要です
介護保険制度施行10年、制度は普及し利用も拡大・定着しているものの、2度にわたる改定を経て利用者・関係者から不満の声が上がっています。基本的に高齢化のスピードに追いついていません。
「高齢社会をよくする女性の会」は昨年11月、47都道府県の会員と会員周辺の介護保険関係者を対象に、各地域における介護保険制度の実態と問題点について調査を行いました。
「頼りになる愛される介護保険」そして「わかりやすく使いやすい介護保険」にするために、調査結果を踏まえ次の政策を実現するよう要望します。
詳しくは、別添「介護保険制度の実態と問題点に関する調査〈概要〉」をご覧いただければ幸いです。
男女共同参画社会第3次基本計画の策定にあたり、世界のトップを切って超高齢化の道をすすむ日本社会において、とくに高齢女性の視点から以下を提言致します。女性は男性より7歳近く平均寿命が長く65歳以上人口の6割を占める多数派です。にもかかわらずその声は政策決定に届きにくい状況にあります。本要望書は当会が女性高齢者を多く含む当事者団体として、長年にわたって調査研究交流活動を行ってきた結果を踏まえたものです。
高齢女性の貧困は世界的にも大きな問題として認識されています。我が国においては、性別役割分業意識が他の先進国より強く残り、女性は安定的良好な就労機会に恵まれず、とくに家族の保育・介護のケア役割によってしばしば就労は中断され、賃金、社会保障の上で大きな不利益を受けてきました。生涯にわたる経済的不利益の総決算が女性の老後の貧困です。
長期的には若い時期からの男女の就労上の格差是正が必須の課題ですが、短期的には、現在の高齢者の経済的自立支援が必要です。一人ぐらし高齢者のうち年収120万円未満は、男性17.3%なのに女性は23.7%。女性単身世帯では年収180万円未満が約半数を占めます。高齢女性の就労希望動機は男性以上に「収入を得る必要がある」が多いのです。
高齢女性の声を政策に反映させるルートの確立
さらに女性の比率は、国会議員地方議員とも世界で有数の低さであり、そのため高齢女性は (1)高齢者として(2)女性として、施策決定の場から二重に疎外されている。したがって高齢女性の声を政策に反映させる何らかの措置が必要である。
今回、群馬県渋川市(静養施設たまゆら)の火災で10人の高齢者が亡くなりました。私たち一同、この事件を深い悲しみと憤りをもって受け止めています。私たちの会員の多くは女性であり、女性の側が年金、持ち家など資産、就労収入など経済的に困難な状況にあることを知っています。したがって今回のような低所得者層の居場所のない状況を黙視することはできません。よって次の政策を実現するよう緊急に要望いたします。
この10年、福祉予算の削減と介護保険による福祉のビジネス化が進みその結果として今回のような低所得者など立場の弱い高齢者にしわ寄せが来ています。この際、長期的な社会福祉政策とは別に、緊急に居場所を必要とする高齢者の生活を支える「救急車」として、以下の政策の実施を求めます。
今回の事件でとくに貧しい高齢者が行き場を失っていることが明らかになりました。墨田区だけでなく地価の高い東京をはじめとする大都市から閉め出されています。高齢者が今を生きるその土地で天寿を全うできるよう、少なくとも居住する都道府県で住み続けることを原則としてください。
2006年(平成18年)有料老人ホームの定義が拡大されたにもかかわらず、今回の「たまゆら」のような無届有料老人ホームで事故が続出しています。報道機関(読売新聞3月30日付)によれば、無届有料老人ホームは少なくとも全国で464カ所にのぼり、届出ホーム数の2割に達しています。
世界に先駆け超高齢化がすすむわが国において、人生のライフラインである介護保険が、担い手の側から崩壊の危機に瀕しています。
四半世紀前の結成当初から私たち「高齢社会をよくする女性の会」は、介護の社会化を提唱、当時嫁に一極集中していた介護を、大切なものとして位置付け社会全体で支え合う活動をすすめてきました。介護保険の成立は大きな成果でしたが、介護労働に従事する人たちの労働条件の現状は、まるで介護が「社会の“嫁”」によって担われている感があります。介護者が幸せでなければ、要介護の高齢者が幸せになれるはずがありません。
私たち女性は介護従事者の8割を占め、家族介護者の4分の3を占め、また要介護者の72%、一人暮らし高齢者の4分の3を占め、介護についてきわめて高い当事者性を持っています。その視点からみて介護従事者の置かれた状況を看過することはできません。
私たちはこの9月8、9日に開催された第26回全国大会・静岡(約3千人)の全体集会において、本件に関して緊急提言することを満場一致で決議いたしました。
以下にその要望を記します。
介護に従事するすべての労働者に対して、労働基準法はじめ、男女雇用機会均等法、改正パート労働法の法規を経営者は遵守してください。とくに、時間外賃金、深夜業の賃金に関する法令の遵守を求めます。
研修に参加する介護従事者のために、潜在有資格者、ボランティア経験者等による代替要員を確保し、一定の研修は無料とします。
また意欲ある介護従事者の個性と能力を生かして、要介護者の生活をより豊かに支えるために専門介護従事者への道を開いてください。また介護従事者として出発した有能な人材が、管理職、責任者として活躍する道をひらくよう望みます。介護保険に関連して働く事務・管理部門の職員は、必ず介護現場の体験を持つよう望みます。
介護はますます高齢化する21世紀にあって、人間の尊厳を守り個人の生活を支える重要な仕事です。魅力ある職場をつくり、有能な人材が若い世代も中高年も多様なルートで参入できる道を開くことが大切です。私たちの会の調査によれば、現在の要介護者・家族が望む介護者像の一番人気は「保育・介護体験があり、資格技術を習得した中年女性」でした。介護従事者の参入ルートの1つとして、女性の現状を踏まえ次の点を要望します。
全国どこに住んでいても、安い学費で充実した授業を受講できるよう、放送大学に「介護学科」を新設してください。すでに看護については設置されています。
家族の介護看護を理由として職場を離れる人は年間10万人近く、ほぼ9割は女性です。その体験をプロとして生かせるような参入ルートをつくり、研修の機会と情報提供、就労斡旋を行なってください。文部科学省が行なう再チャレンジ支援事業とも提携するよう望みます。
介護は日本社会を土台で支える仕事でありながら、国費による養成はじめ奨学金制度が不十分です。企業をはじめ広く社会から奨学金を集め(たとえばグリーンリボン奨学金などの名称で)とくに中年女性、途中離職女性などの再チャレンジを支援する奨学金の推進と充実を望みます。
全国、各自治体で、介護従事者による会合を定期的に開き、介護従事者同士が出会い、好事例の発表、情報交換、交流研鑽の場とするよう支援してください。介護従事者を中心として各職種との交流、とくに利用者・家族とのネットワークの場とします。
介護の重要性を認識する世論形成のため、介護従事者、家族介護者を支援する「介護の日」の制定を求めます。すでにイギリス、オーストラリア、米国などでは公的に定められ、国際的なネットワーク化の動きもあります。高齢化先進国であるわが国は、世界に向けて発信する介護に関する内容をすでに蓄積しています。
以上のような活動を通して、人生100年社会とも言われる今、人間の一生を支える介護という柱を、社会の豊かさをはかるもう一つの基準軸として確立し、生涯にわたる国民の安心を持続可能とするよう要望します。
介護保険法の改正案が今、国会で審議中です。施行5年後の抜本的な大改正の審議を、私たちは国民的課題として、自分自身の問題として、深い関心を持って見守っています。
今回の改正案の第1条に、要介護者の「尊厳の保持」が加えられたことを、私たちは高く評価しています。
また、地域に根ざしたサービス向上や保険者の権限強化などについても、いくつかの問題は含みながら、概ね妥当と考えています。
しかし、以下に述べる2つの点に関しては、私たちにとって容易に納得できないところであり、関係各位に、再考・再検討を求めたいと思います。
これまでの要支援・要介護1を新予防給付と位置付けることに、利用者はもちろん多くの高齢者が不安を持ち、かつ複雑化する制度の理解に苦しんでいます。国は軽度者に対する自立支援・介護の理念とモデルをあらためて明確にし、財政上の問題とともに国民に提示する必要があります。
新予防給付のような、制度の根幹にかかわる大改正は、介護保険導入時のように、広く国民的論議を起こし、利用者・国民の声を聞き、その理解と納得を求めるべきです。
そこで以下を提案します。
介護保険事業が地域に広がり、介護保険を通して地域構築の展望が見えてきたことは喜ばしいと思います。
また、今回改正の焦点となる「介護予防」の必要性について異論はありません。しかし、介護予防は幼少期から長期的に、要支援・要介護となる以前から行なうことこそ必要であり有効なのではありませんか。
要介護となることは、基本的に本人の過誤ではなく、まして悪ではありません。要介護は人間の老化の正常な一過程で、だれもが出合う可能性があります。
ですから私たちは、長寿社会における個人と家族と社会の必需品「介護」について、負担と給付の関係および相互扶助が明確な社会保険制度を選びました。
国民の介護ニーズに応えてつくられた介護保険の給付は、最大限介護を必要とする利用者に、還元すべきと考えます。
以上のような認識に立つとき、予防重視型地域支援事業に関して以下を要望いたします。
介護保険施行5年、介護保険は概ね期待された効果を上げ、円滑に運営されているのは喜ばしいことです。家族に集中していた介護が軽減され、市場化された介護サービスは社会を活性化していますが、一方で新たな課題が生じています。
私たち「高齢社会をよくする女性の会」は、地域ボランティア、各分野の専門家などで構成されていますが、多くの会員は高齢者あるいは家族の立場にあり、私たちはあくまでも高齢者・利用者の視点から発言しています。
介護保険がもっていた「選択」と「自己決定」と「参画」というよろこび、自立支援という介護の新しい定義がもたらした厚生労働行政への国民の信頼を、今回の改正で失うことのないよう、私たちは望んでいます。
行政には支配に対する抑制を、事業者には公共の分野で営業する際に必要な高い倫理性を、利用者もまた社会保険制度で支え合っている認識と節度を持して、国民共有の財産である介護保険制度を持続可能な社会資源として、本格的超高齢社会に残すことを願って止みません。
介護保険法施行によって、今まで見えにくかった高齢者の実態が明らかになり、新たな政策的対応を要する課題が出現しています。
その中でも最も緊急を要する課題は、高齢者に対する虐待防止策だと私たちは考えます。人間の生涯を通して、どの段階においても理不尽で暴力的な虐待は許されません。とくに長い人生の最終段階で、これまで持っていたさまざまな力が衰えていく時期に、頼りにする家族や介護者から虐待されることは、痛切の極みであり、この社会にあってはならないことです。近年、児童虐待防止法、夫婦間暴力を防止するDV法が制定されましたが、高齢者への暴力・虐待の防止は法の盲点となっています。
私たち「高齢社会をよくする女性の会」は、先行調査も乏しかった1997年「在宅介護調査」の中に「虐待」を設問し、介護者が介護ストレスから虐待に至る経緯を知りました。また、介護保険法施行前から東京都の駆け込み寺(当時)の事例を収集・分析した当会理事によって、要介護ではない高齢者が家族から受ける虐待の内容が明らかになっています。
このほど厚生労働省では初めて全国的な高齢者虐待調査に取り組み、新しい知見が発表され、今後の施策に多くの示唆を与えています。私たちはこのところ3回の公開勉強会を開き、当会のメンバーである介護家族、高齢者本人など当事者、医療ソーシャルワーカー、ケアマネージャーなど高齢者の福祉・医療の専門家、弁護士と共に、多くの事例を含め討論をすすめてきました。高齢者虐待の一端が明らかになり関心が高まっている今こそ、法的整備を含め、高齢者虐待ゼロ作戦というべき新しい施策を展開して下さいますよう、当会として要望し、提言いたします。
虐待は人間の尊厳を犯す犯罪であることを国として宣言するために「高齢者虐待防止法」(仮称)を策定し、高齢者虐待は犯罪であることを明記する。その際、何が高齢者に対する虐待であるか、専門家・関係者のみならず国民すべてに理解できるようその定義を明示し、全国民に周知徹底啓発をはかる。
高齢者虐待は、加害者と被害者が親密な関係にあり、虐待という認識が双方に欠ける場合が少なくない。また現在までの人間関係の歪みや介護ストレスから生じる虐待もある。被害者の救済を第一にはかるのはもちろんだが、加害者もまた認識を深めるために、現状を改善するカウンセリング等が必要である。被害・加害双方に対して必要なケアが行われない限り、虐待の悪循環は止まらない。
虐待は犯罪であるという認識が国民に広がり、周囲から虐待の事実が所管行政機関に通報されたとしても、避難場所をはじめ有効な救済策が取られない限り、問題再発の可能性が高い。とくに高齢者は、若いDV被害者と違って技術の習得などによる就業・自立への可能性が乏しい。高齢の被害者には、高齢期の特性を踏まえた施策と施設が求められる。
東京都においては、世田谷区と昭島市の二カ所に高齢者緊急相談センター(いわゆる高齢者駆け込み寺)が開設されていた。1994年から1998年の5年間の調査では、健常な高齢者250人が、虐待を受けて駆け込んできた。現在多くのニーズがさらに顕在化しているにもかかわらず、廃止されたことは誠に遺憾である。これも国の準拠法規がなかったことが理由の1つであり、早急に国による立法措置を要望するものである。
虐待の危機にさらされる高齢者は、在宅の要介護者ばかりではない。高齢者介護施設・グループホームなどにあっても、密室化した場合や職員の認識が低い場合は、弱者である高齢者に対してさまざまな虐待が起こり得る。また、現状では、健常で自立した高齢者であっても、相対的に力関係が弱くなる中で、家族などによる虐待を受ける危険性がある。したがって、施設か自宅か、自立か要介護かなどの違いに着目した、きめ細かな対応が必要である。
高齢者虐待の被害者は男女を問わず存在し、高齢者虐待全国調査(厚生労働省)によれば、加害者の32.1%は息子であった。被害者・加害者双方の立場から見て、男女両性の問題であることは明らかである。とはいえ、「調査」によれば被害者は76.2%と圧倒的に女性である。施設入居者も7〜8割が女性である。これまで女性が置かれてきた家族内外の地位や力関係からみて、女性はとくに虐待の被害者になりやすい状況にあることを考慮し、女性の人権を守る視点からの、適切かつ長期的対策が求められる。
高齢者虐待防止法(仮称)を制定し、さらにその上で以下のような分野で、総合的かつ強力な具体策の展開が求められる。
2002年10月12日から14日まで、ワシントン郊外のクリスタルシティで第三回国際家族介護会議が開催された。この会議は、介護を家族の責務とする考えから介護の社会化という転換に向かう中で第一回の会議が1998年にロンドンで開催された。会議は隔年ごとに行なわれ、第二回目の会議がオーストラリアのブリスベンで開催された。当会では第一回より参加し日本の高齢者問題への取り組みをアピールしてきた。今回は、井上/白井の両運営委員が出席した。9.11から1年を過ぎた今もアメリカの緊張は強くワシントンに着くまでに四回もセキュリティチェックを受け、うち二回は靴の中まで調べるという徹底ぶりに1994年のカイロ会議を思い出した。
会議は世界中から700名以上の人が参加し高齢者、障害者、児童の問題と幅広く話会われた。全体会では世界の8地域の代表が基調報告をしたが、日本からは東京都立大学の小林良二教授が日本の介護保険について報告した。
当会の井上由美子運営委員は高齢者介護のワークショップで日本の介護保険における家事介護とジエンダーの問題について発表した。ここでは、国際長寿センターの工藤さんがホットラインから見た介護問題を、Npo法人ひと.まち社の池田さんが介護保険に関する調査報告をした。南米やアフリカなど世界各地からの参加者から多くの質問があり日本の介護保険への期待の高さを感じさせられた。
アメリカの参加者たちからは、アメリカでは国家、州、地方自治体と役割が別れており福祉サービスは州や自治体の役割だが施策もばらばらで統一的なものがない。アメリカ人は自主独立を信条としており、自分のお金があるうちは自費で払うという意識が強く介護に関する民間企業も発達している。ただ、費用が高いために利用できない層も多い。そのため、ボランティアの活動などでもカバーしている。手持ち金が無くなるとメディケアなどにより援助を受けるが量も質も十分ではないという発言があった。日本では生活保護に対するスティグマが強いが、アメリカでは当然の権利と考えられている。
各地区の介護者協議会などでは、州や自治体による介護施策のレベルアップのために働きかけている。また、この会を運営した全国介護者協議会や全米退職者協会などの団体も、国の施策に反映させるようにロビー活動をおこなっている。
政府の新しい動きとして、医療保険とソーシャルサービスの統合が検討されており、国家公務員の医療保険に介護が組み込まれることが決まったというが、医療保険自体が民間企業が担っている国なので全国民にということではない。帰路に立ち寄ったニューヨークで、旅行会社を経営する友人と話をしたが、経営が厳しくなったために保険会社の変更を雇用者に提案しているという。
アメリカでは民間保険会社と契約を結んでおり保険料も医療内様も千差万別だ。そしてその内容が労働条件になっている。経営者も雇用者もその内容についてシビアに受け止めている。結局予防して元気でいることが金をかけずにすむと言う訳で、健康志向が強い。色々なことを考えさせられたアメリカだった。
行ってきました。私たちのマドリッド。高齢社会をよくする女性の会一行13名は、高齢社会NGO連携協議会(略称/高連協)傘下のツアーに入り、朝日、読売の記者とともに総勢28人のグループで高齢社会に関する世界会議のNGOフォーラムに参加しました。男性陣は、さわやか福祉財団理事長・堀田力さんをはじめ少壮精鋭。いつもの女性ばかりのツアーとは一味違う幅の広い活動ができました。
その最たるものが新聞など(朝日5/3、神奈川新聞4/29、読売4/16、静岡新聞 5/13)で報じられたとおり、マドリッドへ着いてから思い立ち、「アジアでの経験を分かち合うために」と題し、70人の会場満杯のワークショップ(アルバムはこちら)を実現してしまったことです。アジアでのネットワークづくりの新しい第一歩が刻まれたと言っても過言ではありません。
当会のメンバーは準備に、チラシづくりに、参加者獲得に力を尽くし、当日は名司会の冨安兆子さん、抜群の集客能力の吉武輝子さんをはじめ、東北勢から関西、近畿、九州まで、全員参加でワークショップを盛り上げました。
さて、私、樋口恵子ですが、当会の活躍のおかげで、AARPラウンドテーブル、OWN(Organization of Women's Network)のワークショップの二つからパネリストとして話すよう依頼を受けました。英語の苦手な私に、その上、降って湧いたというか、自ら求めたというか、自前のアジア向けワークショップと、3回も出番を得て、苦しく、かつ嬉しいことでした。これからも否応なく、外国との交流が広がります。しかし、それも国内でみなさんの力によるわが「高齢社会をよくする女性の会」の地域での活動が積み重なってこそ、社会的・国際的発言につながるのです。
今回のご報告は日頃、国内の地域でのみなさまの活動をまとめたものです。
フォーラムの中でいちばん大きな集会はAARP(アメリカ退職者連盟)会長のテス・カンジャ(女性)さんの司会で行なわれた「女性の高齢者が変革の力としてどんな役割を果たしたか」をテーマとする円卓会議でした。私は当会の活動に的を絞ってお話ししました。
生活上のストレスとうまく立ち向かうことが年を重ねていく上で重要なことである。この分科会の目的は、高齢女性が自分たちの生活の向上のため、家族や近隣社会の生活向上のため変革の行為者として活躍するいろいろな場面を探ることである。
AARPの円卓会議でお話しできて大変光栄に存じます。私は大学でジェンダー問題と家族関係について教えています。
このフォーラムには高齢社会をよくする女性の会の代表として、私たちの会の紹介をいたします。この会は20年前、ウィーンで世界高齢者会議が開かれた年に創設されました。会員は60代の後半の人を主体に、20代から80代に幅広い層にわたっています。
今回は13人のグループで参加しました。大学教授、社会福祉と医療の専門家、作家、ジャーナリスト、政治家、ボランティア団体のリーダーがメンバーです。
現在、会のメンバーは個人会員が1500人、団体会員が150団体です。会は全国各地で活動する個人・団体会員をむすぶ連絡協議体です。
まず、会の設立の経緯についてお話しします。
1970年に65歳以上の人口が全人口の7%を越え、1994年には14%、2000年には17%を越えました。65歳以上が20%を越えるのは世界でも日本が一番早いと見られています。人口構造の変化で伝統的な家族意識も変化しています。その一方で、70年代に女性一人あたりの出生率が2を割り、女性は伸びた寿命をどのように過ごすか新しい生き方を探し始めていました。
ところが、70年代当時は社会全体としては保守的で、老親の世話は家族がするのが当たり前と考えられていました。1978年の厚生白書では、高齢者の同居率は子ども(長男)の家族と同居が大半で、介護が必要になると嫁がその任にあたっていることを示し、政府としても、「同居率の高さは福祉予算の含み資産である」(予算配分をしなくてすむ)とまで言い切っていたくらいです。
1980年代になって、高齢人口が増加し、社会的問題となると、地方自治体の中には「介護優良家族表彰」するところが増え、「孝行嫁さん顕彰条例」までつくるところもありました。
つぎに会の活動について何点か説明します。一つは高齢者介護についてです。
高齢化社会は女性の生活に大きな影響を与えます。現在、家族介護者の85%、職業ヘルパーの90%は女性が担っています。このため、嫁にあたる女性を中心に退職を迫られ、人生の大幅な設計変更をする女性が少なくありません。年間10万人以上が介護を理由に退職しますが、このうち男性は1万人前後です。「親の面倒をみるのは女性(嫁)の仕事」と社会も家族もみていて、この問題の重要性を見逃してきました。そこで、会では、介護を高齢化社会の新しい問題であるととらえ直し、人口構造が変化した現在、家族のみでは高齢者にとっても人として尊厳を保てる介護を受けられないこと、社会的に家族と高齢者を支援する介護をシステムを創設するよう提案してきました。
その基礎として、それまでのマクロな視点からの行政機関の調査ではともすればこぼれ落ちるジェンダーに敏感な視点から調査研究を進めています。その結果をもとに政府・社会にむかって発言することにしたのです。
会は1987年と1997年に家族介護の実態を調査しました。全国の会員が家族介護者に聞き取り調査をしました。その結果、「介護地獄」とさえ言える現状が明らかになりました。その中で介護にあたっている女性が自分自身の健康を損ねている問題、世間体や夫の賛同が得られずに外部サービスの利用ができない実態が浮かび上がってきました。
この調査結果をもとに、私たちは政府審議会をはじめ関係省庁に繰り返し訴え、1997年にやっと公的介護保険法成立の一方の推進役を果たしました。
「高齢者介護の社会化をもとめる1万人市民集会」を堀田力弁護士・さわやか福祉財団理事長と共同議長として開催しました。この集会には労働組合、専門家、福祉ワーカーその他、関心をもつ人たちが参加しました。
もう一つの活動は中高年女性の健康問題です。1994年のカイロでの国連人口開発会議でリプロダクティブ・ヘルスとライツ(生殖器官の健康、受胎・産児に関する自己裁量権)という概念が打ち出され、これに応じて、会として女性の生涯にわたる健康の保持・増進を支援する政策を提言しました。
中高年女性の健康について調査を実施しました。その一つに主婦、勤労女性、農村部の女性とわけて更年期症状の調査があります。この調査結果を日本、中国、韓国で比較検討しました。更年期症状調査では、夫婦関係の問題ならびに夫婦関係への舅・姑への介護の影響が浮き彫りされました。
もう一つ、調査したのは80代以上の元気な女性の健康の実態についてです。
三つめの調査は、病気とジェンダーです。女性(主婦)が病気になったときの家族の反応と医療機関の対応について調べたものです。
これから扱おうとしているのは、高齢者虐待の問題です。介護を受けている高齢者に対する虐待が深刻であることが明らかになったので、この実態について調査することになっています。
以上のような調査の結果は、全国大会その他の会合の場で報告し、マスコミでも報告を扱ってもらいます。
会の重要な目標として、国・地方の政府の政策決定過程への参画の促進があります。福祉政策は中央政府が決め、市町村が実施します。地方分権一括法と介護保険法が2000年4月に施行され、地方自治体の責任と権限がいっそう広がりました。
会は、国はもちろん地方自治体ならびに政治的決定過程への女性の参加を推進しようと力を注いできました。会では全国の地方議会の女性議員を対象に調査し、高齢者福祉についての考えを聞き、介護保険事業計画の女性委員の比率などを調査しました。また「女性議員の勉強会」を開催し、福祉に強い女性議員の増加につとめてきました。
つぎにネットワークづくりについてご紹介します。私たちは地方自治体と共催で持ち回りで全国大会を開催して、いろいろな組織とのネットワークづくりをしています。全国大会で提起された内容を大手出版社から単校本にまとめて市販します。昨年12月には、「女性と健康ネットワーク」との共催でシンポジウムを開催しました。ここでは専門家が「働く女性の健康」「更年期の健康」「高齢期の健康」の分科会に分かれて検討しました。この集会には20代から80代の200人が参加し、「健康な高齢女性は社会の資源である」という結論に達しました。
最後に地方のグループの活動について二、三、ご紹介します。一つは北九州にある会員千人を越える大きな団体の活動です。この団体では、若い母親むけの育児サポート、高齢者むけには介護保険ではカバーされない食事配達とホームヘルプ・サービスを実施しています。現在、介護サービス業者についての情報公開を推進しています。
大阪のグループでは施行2年度の介護保険を利用者、家族、介護機関、職業介護者、女性地方議会議員のそれぞれの立場からの検討をしています。法的その他の問題を検討しますが、このために評価表を作成し、大阪府の各市町村で調査し、結果を政府に提出することにしています。
最後に、日本の実態についてお話します。政府は2001年に人口予測を改訂し、現在の低出生率と寿命の伸びがこのまま続くと、2050年までに65歳以上の人口が37.4%になると発表しました。現在の倍ということです。その頃の寿命は女性が89歳、男性で80歳になっていると予測しています。その時には、65歳以上の女性は総人口の22%、つまり5人に一人ということになります。いずれにせよ、高齢女性が経済的に豊かなのか貧乏なのか、自立して生活できるのかどうか、健康かどうかなど、日本の社会に大きな影響を与えることになります。現状でも働く女性の40%はパートタイム労働者で、彼女たちの所得は男性の所得の40%にすぎません。また社会保障を受ける資格はありません。現在の年金制度では、妻は夫に扶養されていると考えられています。離婚したり、職業を変えたりすると、年金受給資格を失う女性も出てきます。昨年になって、政府は女性のライフスタイルの変化に合わせて年金制度を改定することを決めました。私たちの会では創設当初から、男女平等で女性の貢献を勘案した年金制度を主張してきました。この制度改定の委員会の議長となったのは当会の創立メンバーの一人です。
財政赤字に悩む政府ではありますが、高齢化と出生率低下の進展を前に、政府は女性の声に耳を傾け始めました。私たちは男性を巻き込みつつ、国内外の関係者と協力して、来たり来る高齢社会を個々の人が基本的人権を享受してよりよい生活をおくれる、より公平な社会にするように努力していきます。
安心の国づくり・その基礎としての医療改革へ
(医療保険制度に関する意見書)
私ども「高齢社会をよくする女性の会」では、今回の「医療制度改革試案」(厚生労働省)について、会員内部での意見募集を行なったところ、全国から84通の詳細な回答が寄せられました。それらの意見および運営委員会で討論した内容を踏まえ、ここに以下のように要望いたします。
財政上の問題が起こるたびの手直しでは、改革の名に値しません。
このたびの「改革」は、取りやすいところから取るという、患者・高齢者の「一方三両損」の感があります。
もちろん少子高齢化という人口構造の大変化に対応した制度改革をすすめ、高齢者を含めた自己負担や保険範囲を見直すことは必要です。それは、医療サービスの価格と質、提供側の体制などを問い直すことと同時に行われる必要があります。また、国民の生命と健康を守る政府・行政が、どのような公的責任を果たすかも問われます。
今回の「改革」が医療サービスの質の向上や情報公開を具体的に約束していないこと、過剰な投薬、重複検査など医療のムダづかいを是正する抜本的な改革に直接結びつかないことを残念に思います。そしてこの不況期に、若いサラリーマンや高齢者、慢性病患者などの窓口負担増を思うとき、今後この方向でよいのかという疑問を禁じ得ません。
「持続可能」の意味を、せめて10年単位で捉え、今後引き続き少子高齢社会の実態に見あった根本的な制度改革に向けて、安心の国づくりの基礎としての医療制度改革にただちに着手することを要望します。
医療は国民の生命の安全保障であり、適切な医療は年齢にかかわりなく、すべての国民の人権であり、基本的なセーフティネットです。医療制度の歪みは、国民の貧富の格差を拡大し、貧困層の増大につながりかねません。
今回の「改革」論議には、前回(97年)以上に国民が不安と共に関心を高めています。
それは、日本の国民皆保険制度への支持と期待に裏付けられています。会員の中には「負担増やむなし」という意見もかなりありました。これも「皆保険」維持という願いのあらわれであり、国民皆保険という誇るべき制度を前提に真の「改革」に取り組むことを要望します。